
雪組公演『ボー・ブランメル~美しすぎた男~』。
瀬央ゆりあ氏の役は、ブランメルを最後まで見捨てなかった友人、ロード・アルヴァンリー(Lord Alvanley)だと信じて疑わなかった私。
でも違うらしいことが判明。
わたし、意外と切り替えは早いので、なおちゃん(瀬央ゆりあ)がプリンス・オブ・ウェールズだというのなら、徹底的に予習します。(笑)
今回もプリンス・オブ・ウェールズの側から語る「続・プリンス・オブ・ウェールズとボー・ブランメル」をお届けします!
国王としてのジョージ4世(プリンス・オブ・ウェールズ)
1820年、父であるジョージ3世の崩御を受けて、それまで摂政(Prince Regent)として政治を掌って来たジョージ・オーガスタス・フレデリック(プリンス・オブ・ウェールズ)は、正式にイギリス国王ジョージ4世として即位しました。
即位したときにはすでに57歳。
若き日の奔放さと華麗さはそのままに、政治的な評価は低く「浪費王」「無能な王」と批判されました。
しかし、文化や芸術へ寄せる思いは際立っており、特に建築や美術品の収集に熱心だったようです。
ロンドンのバッキンガム宮殿には様々な歴史がありますが、ジョージ4世の時代に宮殿に改修されています。
また、イギリス南部の海辺の町ブライトンに、ロイヤル・パビリオンという観光名所がありますが、これもジョージ4世によって建設されてたものです。
ジョージ4世が摂政として過ごした皇太子時代に、海辺の別荘として建てた王室の離宮です。

当初は小規模でシンプルな建物だったようですが、後に大幅に増築され、写真のようなインド・イスラム風の外観が象徴的な宮殿になりました。
このブライトンは私にとって1年間暮らした思い出深い街ですが、次回、星組公演『恋する天動説-The Wand'rin' Stars-』の舞台となっている街でもあります!
ロイヤルパビリオンはBrightonの象徴的な建物なので、もしかしたら星組の舞台に登場するかも。
こうした建造物はジョージ4世の審美眼を象徴する存在であり、これらの壮麗な空間にはブランメルが広めた「洗練とエレガンス」の精神が色濃く投影されていると言えるでしょう。
ファッションと宮廷儀礼へのこだわり
ジョージ4世は、実は肥満体質。
健康面にも問題を抱えていました。


それでも衣装や儀礼への執着は衰えることはなく、彼が国王として臨む晩餐や式典は、常に華麗さと整然さが求められ、宮廷の「見せ方」に対して異常なほどの関心を寄せていました。
これはまさに、かつてブランメルが示した「見た目こそが人を定義する」という価値観の延長線上にあります。
シンプルかつ清潔で、洗練された装いを重んじるブランメルの理念は、豪奢な国王の衣装に表面的には覆い隠されながらも、儀礼の根底に流れる「整然とした優美さ」という形で生き続けていたのです。
失われた友情の影と沈黙
ジョージ4世は即位後、表立ってブランメルについて語ることはありませんでした。
しかし、王の身近にいた廷臣たちは「国王の美的こだわりや社交儀礼の細部に、ブランメルの影響を読み取れる」と証言しています。
一方、王太子の体型を揶揄する発言がきっかけで宮廷から遠ざかることになったブランメル。
のちにフランスに逃れたブランメルは借金と孤独に苦しみ、晩年は田舎町カーンの精神病院で過ごし、1840年に亡くなりました。
その死はロンドンにほとんど波紋を呼ぶこともなく、また、ジョージ4世自身も既に1830年に亡くなっていたこともあり、二人の関係は歴史の中で静かに終わりを迎えます。
それでも、かつて二人が交わした友情と影響の連鎖は、後世に「ダンディズム」という文化潮流として残り、王室のイメージ形成にも寄与し続けました。
ジョージ4世とブランメルの文化的遺産
二人の関係は、一見すれば「浪費好きな王と機知ある取り巻き」という単純な構図に映ります。
しかし歴史的に見れば、それ以上の意味を持ちます。
ファッション革命
ブランメルは派手な装飾を捨て、シンプルで洗練された紳士服を確立しました。
これは後世のスーツ文化の原点ともなり、ジョージ4世を通して宮廷儀礼に取り込まれたことでヨーロッパ全体に広がりました。
社交界の変容
王太子の宮廷に出入りすることが許されたことで、ブランメルの価値観は「上流階級のみの特権」ではなく、広く市民文化と交わりました。
これは産業革命期のイギリスにおいて、社会的流動性を象徴する現象でした。
文化的審美眼の定着
ジョージ4世は芸術を保護する役割を果たし、フランスのルーヴルやヴェルサイユから集めた芸術品をイギリスに持ち込みました。
その選択基準には「洗練された美」への感覚があり、これもまたブランメルとの交流で磨かれた感性と無縁ではありません。
二人の関係から見える「時代精神」
ジョージ4世とブランメルの関係を単なる「友情や確執の物語」として終わらせるのは容易です。
でも、本質はそこにとどまりません。
二人の交流は、「王権と市民社会の新しい距離感 」を象徴し、さらには「近代的な個人の自己表現」の萌芽を示していたのではないでしょうか。
ジョージ4世は絶対的な権力を持ちながらも、自己の美意識を補完する存在としてブランメルを必要としました。
逆にブランメルは、市民出身ながら王太子の美学を方向づけ、やがてヨーロッパの文化史に刻まれる存在となりました。
この「上下逆転の瞬間」こそが、リージェンシー期の特異な時代精神を物語っていると言えます。
ジョージ4世の治世は政治的には失敗の烙印を押されましたが、文化史的には「洗練の時代」として後世に評価されています。
その背後には、かつての友「ボー・ブランメル」の影響が静かに、しかし確かに存在しました。
二人の関係は残念ながら破局を迎えましたが、その軌跡は「友情とは何か」「権力と美の関係とは何か」という普遍的な問いを投げかけているようでもありますね。
おわりに
瀬央ゆりあファンとして、プリンス・オブ・ウェールズ側からの視点で物語を予習してみましたが、我ながら楽しみ増し増しになってきました。(笑)
史実はぽっちゃりで健康に問題を抱えていた皇太子(王様)。
ポスターのなおちゃんの髪型の再現具合を見ると、体型も!?とちょっと不安になりますが(笑)、でもきっと宝塚スター☆ヴァージョンの、スレンダー・プリンスで登場してくれるはず!
とはいえ、、、
プリンスの体型を揶揄する発言が、二人の関係性を破綻させるきっかけになるという史実はけっこう重要なポイントな気がするので、それをどう脚色するのかが気になりますね。
生田先生の腕を信じるしかないな。
ここが「女性がらみ」の物語に脚色されるということか、、